独自調査
低PBRと高ROEは両立する?東証上場企業の分布を独自集計
東証上場3,721社を対象に、低PBRと高ROEを両立する企業数、4群分布、市場・業種別の違い、PBR帯別のROE分布を独自集計しました。
PBRが低い企業はROEも低いのでしょうか。資本効率が高いのにPBRが1倍を下回る企業は、どのくらい存在するのでしょうか。PBRとROEを組み合わせると、東証上場企業はどのように分布するのでしょうか。
前回の独自調査では、PBR1倍割れ企業を市場・業種・ROE階級別に調べました。今回は2026年8月30日に固定した別の調査データを使い、PBRとROEの組み合わせそのものを分析します。
調査結果の要点
- 対象はプライム・スタンダード・グロース上場企業3,721社
- PBR・ROEを両方算出できた企業は3,151社
- 低PBR・高ROEは136社、両指標算出可能企業の4.32%
- 低PBR企業のうち高ROEは136社/1,105社、12.31%
- 高ROE企業のうち低PBRは136社/1,221社、11.14%
この記事での低PBR・高ROEの定義
低PBR:0 < PBR < 1
高ROE:ROE ≧ 10%
PBRは表示用に丸める前の値で判定します。ROE10%以上は分布を比較するための便宜的な区分であり、企業価値や投資適格性を保証する絶対基準ではありません。
低PBR・高ROEは136社、全体では少数
両指標を算出できる3,151社を4群に分けると、低PBR・高ROEは136社、4.32%でした。両立する企業は確かに存在しますが、分布全体では少数です。
| 分類 | 企業数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 低PBR・高ROE | 136社 | 4.32% |
| 低PBR・非高ROE | 969社 | 30.75% |
| 非低PBR・高ROE | 1,085社 | 34.43% |
| 非低PBR・非高ROE | 961社 | 30.50% |
低PBR企業の大半は高ROEではなく、高ROE企業の大半もPBR1倍以上です。「低PBRと高ROEは両立しない」とはいえませんが、どちらか一方の条件からもう一方を期待することもできません。
市場別ではスタンダードが85社
| 市場 | 両指標算出可能 | 低PBR・高ROE | 両指標母数比 | 低PBR内高ROE比 |
|---|---|---|---|---|
| プライム | 1,493社 | 47社 | 3.15% | 11.90% |
| スタンダード | 1,284社 | 85社 | 6.62% | 12.57% |
| グロース | 374社 | 4社 | 1.07% | 11.76% |
件数と両指標母数比はスタンダードが最も高い一方、低PBR企業の中で高ROEが占める割合は3市場とも約12%でした。市場ごとに業種構成や成長期待などが異なる可能性はありますが、市場区分とPBR・ROEの因果関係はこの集計から断定できません。
PBR帯が高いほどROE中央値も高い
| PBR帯 | 企業数 | ROE第1四分位 | ROE中央値 | ROE第3四分位 | ROE10%以上 |
|---|---|---|---|---|---|
| 0超0.5未満 | 231社 | 1.12% | 3.04% | 5.82% | 15社・6.49% |
| 0.5以上1未満 | 874社 | 3.84% | 6.07% | 8.36% | 121社・13.84% |
| 1以上2未満 | 1,155社 | 6.01% | 9.07% | 12.36% | 491社・42.51% |
| 2以上 | 891社 | 7.51% | 14.13% | 21.41% | 594社・66.67% |
PBR帯が上がるにつれてROE中央値は3.04%、6.07%、9.07%、14.13%と高くなり、ROE10%以上の割合も6.49%から66.67%へ上昇しました。高ROE企業が市場で高く評価されている可能性と整合的な分布ですが、評価形成の原因までは特定できません。
ROE階級から見ても低PBR割合は下がる
| ROE階級 | 企業数 | PBR中央値 | PBR1倍未満 |
|---|---|---|---|
| 0%未満 | 316社 | 1.70倍 | 103社・32.59% |
| 0%以上5%未満 | 558社 | 0.77倍 | 371社・66.49% |
| 5%以上10%未満 | 1,056社 | 1.03倍 | 495社・46.88% |
| 10%以上15%未満 | 615社 | 1.50倍 | 99社・16.10% |
| 15%以上 | 606社 | 2.74倍 | 37社・6.11% |
ROE0%以上5%未満ではPBR1倍未満が66.49%ですが、10%以上15%未満では16.10%、15%以上では6.11%です。ただし、ROE0%未満のPBR中央値は1.70倍で、すべての階級が単純な単調関係ではありません。赤字企業や自己資本が小さい企業では、両指標の意味を個別に確認する必要があります。
業種別では電気・ガス業が26.92%
少数企業の業種が上位になる影響を抑えるため、両指標算出可能企業が20社以上の業種を比較しました。
| 業種 | 低PBR・高ROE | 両指標算出可能 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 電気・ガス業 | 7社 | 26社 | 26.92% |
| パルプ・紙 | 2社 | 21社 | 9.52% |
| 輸送用機器 | 7社 | 75社 | 9.33% |
| 食料品 | 9社 | 106社 | 8.49% |
| 非鉄金属 | 2社 | 27社 | 7.41% |
電気・ガス業は26社中7社で突出していますが、母数は26社です。利益構造、資本構成、規制、成長期待は業種ごとに異なり、業種差の原因や投資対象としての優劣をこの表だけで判断できません。
相関は外れ値の影響を強く受ける
| 対象 | 企業数 | Pearson | Spearman |
|---|---|---|---|
| 全データ | 3,151社 | -0.220 | 0.425 |
| ROE上下1%範囲内 | 3,087社 | 0.147 | 0.449 |
全データではPearsonが負、Spearmanが正でした。ROE上下1%範囲内ではPearsonも正に変わり、Spearmanでは中程度の正の順位相関が見られます。極端なROEと高PBR値の影響があるため、Pearsonだけで関係を説明するのは不適切です。上下1%の確認は相関の感度分析だけに使い、主要集計から企業を除外していません。相関は因果関係を示しません。
低PBR・高ROE企業を見るときの確認事項
- 高ROEが一時的な利益によるものではないか
- 自己資本が小さいことでROEが高く見えていないか
- 有利子負債が過大でないか
- 営業利益やEPSが継続しているか
- 営業キャッシュフローが安定しているか
- 将来の減益が織り込まれていないか
- 景気敏感業種では利益のピーク付近でないか
- 資本政策、株主還元、ガバナンスに課題がないか
- 株価基準日後にPBRが変化していないか
スクリーナーで候補を絞り、個別銘柄分析で複数年度の利益、ROE、キャッシュフローを確認してください。東京証券取引所も、特定指標の達成だけでなく、資本コストや収益性を踏まえた継続的な分析を求めています。詳しくは東証の関連ページと投資者の視点を踏まえたポイントと事例(PDF)をご覧ください。
まとめ
低PBRと高ROEを両立する企業は136社存在しましたが、両指標算出可能企業の4.32%にとどまりました。低PBR企業のうち高ROEは12.31%です。PBR帯が高いほどROE中央値と高ROE割合も高い分布でした。両立企業は追加調査の入口になり得ますが、それだけで投資判断はできません。ROEの持続性、財務、成長性、キャッシュフローまで確認する必要があります。
調査概要・注意事項
- 集計日時:2026年8月30日
- 対象:プライム、スタンダード、グロース上場企業3,721社
- PBR算出可能:3,312社
- ROE算出可能:3,151社
- PBR・ROE両方算出可能:3,151社
- 株価:原則として2026年8月26日の終値(3,703社)。一部銘柄は2026年6月30日から8月27日の間の異なる基準日
- PBRは株価基準日以前の最新実績FYを使用
- ROEは最新の利用可能な実績FYについて、期首・期末平均自己資本を分母として算出
- 会社予想および期末未到来FYは不使用
- 低PBRは0倍超1倍未満、高ROEは10%以上
- PBR・ROEを算出できない企業があります
- ROE10%以上は分析上の便宜的区分です
- 相関は因果関係を示しません
- 本記事は特定銘柄の推奨や投資助言を目的としません
四分位はPostgreSQLのpercentile_cont相当の線形補間で算出しています。PBR・ROEの詳しい計算方法はデータ・指標の計算方法をご確認ください。