独自調査

PBR1倍割れ企業は何社?東証3市場を市場・業種・ROE別に分析

東証主要3市場3,721社を対象に、PBR1倍割れ企業を市場区分・業種・直近ROE別に独自集計しました。

PBRが1倍を下回る企業は、株式市場で評価される価値が帳簿上の純資産を下回っている状態と説明されます。しかし、実際にどの程度存在し、市場区分や業種によってどのような違いがあるのでしょうか。

J-Stock Dataでは、プライム・スタンダード・グロースに上場する3,721社を対象に、市場区分、業種、直近ROEの3つの観点から集計しました。低PBRを一律に「割安」とみなさず、母数や欠損、収益性も含めて結果を読み解きます。

調査結果の要点

  • PBRを算出できた企業は3,312社
  • そのうちPBR1倍割れは1,184社
  • PBR算出可能企業の35.75%が1倍割れ
  • スタンダードでは53.17%が1倍割れ
  • PBR1倍割れ企業の76.10%がROE 0%以上10%未満
  • 業種別ではパルプ・紙、電気・ガス業、鉄鋼などで割合が高い

調査対象と集計方法

主要分析対象はプライム、スタンダード、グロースの3,721社です。このうちPBRを算出できたのは3,312社で、算出率は89.01%でした。

  • PBR1倍割れは、表示用に丸める前の値が0より大きく1未満の企業とし、ちょうど1倍は含めません。
  • 株価、自己資本、発行済株式数が不足する場合や、1株当たり純資産が0以下の場合はPBRを算出しません。
  • PRO Market 183社はPBR算出可能企業が0社だったため、主要分析から除外しました。
  • 会社予想と期末未到来の年度データは使用していません。

PBR1倍割れは1,184社

項目企業数・割合
調査対象企業3,721社
PBR算出可能3,312社
PBR算出率89.01%
PBR1倍未満1,184社
算出可能企業に占める割合35.75%
調査対象全体に占める割合31.82%
PBR1倍以上2,128社

PBRの中央値は1.28倍、第1四分位は0.82倍、第3四分位は2.21倍でした。1倍という境界だけでなく、分布全体を見ると、企業ごとの評価には大きな幅があります。

市場区分によって1倍割れの割合は大きく異なる

スタンダードではPBR算出可能企業の過半数が1倍割れでした。一方、グロースは1倍割れ割合が低く、PBR中央値が最も高くなっています。

市場PBR算出可能PBR1倍未満1倍未満割合PBR中央値
プライム1,512社430社28.44%1.36倍
スタンダード1,339社712社53.17%0.94倍
グロース461社42社9.11%2.41倍
プライム、スタンダード、グロース市場別のPBR1倍割れ企業割合
市場別のPBR1倍割れ企業割合。分母は各市場のPBR算出可能企業。

市場区分によって企業規模、成長期待、業種構成、収益の安定性は異なります。この集計は分布の違いを示すものであり、市場区分がPBRを決めるという因果関係や将来評価を示すものではありません。

業種別ではパルプ・紙、電気・ガス業、鉄鋼などで高い

母数の小さい業種を過大評価しないよう、主要比較はPBR算出可能企業が20社以上の業種に限定しました。

業種PBR算出可能PBR1倍未満1倍未満割合1倍未満企業のROE中央値
パルプ・紙22社20社90.91%4.55%
電気・ガス業27社23社85.19%7.40%
鉄鋼35社27社77.14%4.57%
輸送用機器77社58社75.32%4.83%
金属製品79社58社73.42%4.81%
倉庫・運輸関連業28社18社64.29%5.87%
繊維製品46社28社60.87%3.21%
PBR算出可能企業が20社以上ある業種別のPBR1倍割れ企業割合
PBR算出可能企業が20社以上ある業種の比較。分母は各業種のPBR算出可能企業。

情報・通信業は10.45%、サービス業は18.30%でした。空運業は算出可能な3社すべてが1倍割れですが、母数が3社だけなので主要比較から外しています。業種ごとに資産構成、利益率、景気感応度、成長期待が異なるため、PBRだけで業種間を単純比較できません。

PBR1倍割れ企業の約4分の3はROE 0~10%

PBR1倍割れ1,184社のうち、最多はROE 5%以上10%未満の522社です。0%以上5%未満の379社と合わせた901社は全体の76.10%、ROE算出可能な1,155社に限ると78.01%です。

直近ROE企業数1倍割れ企業に占める割合PBR中央値
算出不可29社2.45%0.78倍
0%未満103社8.70%0.55倍
0%以上5%未満379社32.01%0.64倍
5%以上10%未満522社44.09%0.75倍
10%以上15%未満113社9.54%0.82倍
15%以上38社3.21%0.74倍
PBR1倍割れ企業1,184社の直近ROE階級別構成
PBR1倍割れ企業1,184社のROE階級構成。ROEは最新の利用可能な実績FYを使用。

ROE10%以上の企業も151社あり、PBR1倍割れ企業のすべてでROEが低いわけではありません。一時利益、将来の減益懸念、財務構成、事業リスクなど別の要因も考えられますが、この集計だけで因果関係は証明できません。

低PBRを「割安」と判断する前に確認したいこと

ROEが継続しているか

直近値だけでなく複数年度の推移を確認します。一時的な資産売却益や税効果で純利益が増えた年度にも注意が必要です。

利益が営業キャッシュフローにつながっているか

利益が出ていても営業キャッシュフローが継続的にマイナスなら、売掛金や在庫などの変化を確認します。

純資産の内容

現金、不動産、設備、投資有価証券、のれんなど、資産の内容と収益への貢献は企業ごとに異なります。

業種内での相対的位置

市場全体だけでなく、同業企業のPBR、ROE、利益率、成長率と比較します。

将来の利益に対する市場評価

将来の減益、成長期待、事業縮小、資本コストなどはPBRだけでは判断できません。東京証券取引所も、特定の数値だけの達成ではなく、資本コストや収益性を踏まえた継続的な分析と取り組みを求めています。詳しくは東証の「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」投資者の視点を踏まえたポイントと事例(PDF)を参照してください。

まとめ

PBR算出可能な3,312社のうち1,184社、35.75%が1倍未満でした。ただし割合は市場や業種で異なり、ROE10%以上の企業も存在します。PBR1倍割れは結論ではなく、収益性の持続性、キャッシュフロー、資産内容、同業比較を調べる入口として扱う必要があります。

調査概要・注意事項

  • 集計日時:2026年8月22日
  • 対象:プライム、スタンダード、グロース上場企業3,721社
  • 株価:原則として2026年8月19日の終値。一部銘柄は2026年6月30日から8月20日の間の異なる基準日
  • PBRは基準日以前の最新実績年度を使用
  • ROEは最新の利用可能な実績年度について、期首・期末平均自己資本を分母として算出
  • 会社予想および期末未到来の年度データは不使用
  • PBR・ROEを算出できない企業があります
  • 本記事は特定銘柄の推奨や投資助言を目的としません

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