独自調査
成長企業は高収益なのか?売上成長率と営業利益率で東証上場企業を独自分析
分析対象3,086社のうち、高成長と高収益を両立した企業は378社(12.25%)。高成長企業のうち高収益だった割合は33.13%でした。
売上が伸びる企業は、高い営業利益率も確保しているのでしょうか。東証プライム・スタンダード・グロースの企業について、直近5つの実績FYから計算した売上CAGRと、直近5FYの平均営業利益率を組み合わせて調べました。
主分析3,086社のうち、高成長と高収益を両立した企業は378社、全体の12.25%でした。一方、高成長1,141社のうち高収益だった企業は378社、33.13%です。売上成長だけでは、高い営業利益率を確保しているとは限りません。
主要結果
- 高成長・高収益は378社で、分析対象3,086社の12.25%
- 高成長企業1,141社のうち高収益は378社、33.13%
- 高収益企業739社のうち高成長は378社、51.15%
- 成長率と利益率のPearson相関は-0.071、Spearman順位相関は0.227
指標の定義と分析対象
高成長:売上CAGR 8%以上
高収益:直近5期平均営業利益率 10%以上
売上CAGRは、直近5つの実績FYを使う4期間の年平均成長率です。「5年間の成長率」ではありません。最新FYと最古FYの売上高が正で、5期そろう場合に算出します。平均営業利益率は、直近5FYすべてで算出可能な各期の営業利益率を、各期では丸めずに単純平均したものです。スクリーナーで表示する最新FY営業利益率とは異なります。
8%と10%は今回の調査上の区分であり、スクリーナーの初期条件ではありません。
表は左右にスクロールできます
| 段階 | 除外数 | 残存数 |
|---|---|---|
| 東証3市場 | — | 3,718社 |
| 金融4業種を除外 | 169社 | 3,549社 |
| 不規則FYを除外 | 11社 | 3,538社 |
| 両指標不足を除外 | 452社 | 3,086社 |
除外は表の順に適用しているため、重複計上はありません。指標不足企業を低成長・低収益には含めていません。金融4業種は利益率の構造が一般事業会社と異なるため除外しました。
高成長・高収益の4群分布
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| 区分 | 企業数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 高成長・高収益 | 378社 | 12.25% |
| 高成長・非高収益 | 763社 | 24.72% |
| 非高成長・高収益 | 361社 | 11.70% |
| 非高成長・非高収益 | 1,584社 | 51.33% |
高成長企業の約3分の2は平均営業利益率10%未満でした。ただし、この集計だけから成長投資が利益率を下げたとも、利益率が成長を左右したとも判断できません。
市場別ではグロースの算出率が低い
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| 市場 | 主分析 | 高成長・高収益 | 主分析内割合 | 両指標算出率 |
|---|---|---|---|---|
| プライム | 1,356社 | 226社 | 16.67% | 90.70% |
| スタンダード | 1,411社 | 91社 | 6.45% | 92.44% |
| グロース | 319社 | 61社 | 19.12% | 54.52% |
高成長・高収益の割合はグロース19.12%、プライム16.67%、スタンダード6.45%でした。ただしグロースの両指標算出率は54.52%で、プライムとスタンダードの9割前後を大きく下回ります。上場後の履歴が短く5FYに満たない企業が分析から外れるため、市場間比較には残存企業への偏りがあります。
売上CAGR帯別の営業利益率分布
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| 売上CAGR帯 | 企業数 | 第1四分位 | 中央値 | 第3四分位 |
|---|---|---|---|---|
| 0%未満 | 486社 | -0.57% | 2.77% | 6.18% |
| 0%以上5%未満 | 879社 | 2.53% | 5.07% | 8.38% |
| 5%以上8%未満 | 580社 | 3.73% | 6.26% | 9.93% |
| 8%以上15%未満 | 702社 | 4.17% | 7.42% | 11.73% |
| 15%以上 | 439社 | 1.65% | 6.45% | 12.09% |
CAGR 8%以上15%未満では中央値7.42%でしたが、15%以上では6.45%でした。成長率が高いほど利益率も一方向に高くなる形ではありません。巨大な負の利益率を理由なく除外せず、図では外れ値の影響を受けにくい中央値と四分位範囲を使いました。
業種別では両立割合に差がある
主分析で両指標を算出できる企業が20社以上ある業種から、高成長・高収益の割合が高い上位10業種を示します。
表は左右にスクロールできます
| 業種 | 分子/分母 | 割合 |
|---|---|---|
| 不動産業 | 33/114社 | 28.95% |
| 情報・通信業 | 122/466社 | 26.18% |
| 精密機器 | 10/45社 | 22.22% |
| 機械 | 40/195社 | 20.51% |
| サービス業 | 73/404社 | 18.07% |
| 医薬品 | 9/57社 | 15.79% |
| 電気機器 | 24/214社 | 11.21% |
| その他製品 | 10/96社 | 10.42% |
| 非鉄金属 | 3/30社 | 10.00% |
| 電気・ガス業 | 2/27社 | 7.41% |
業種ごとに事業モデル、資本集約度、売上計上方法が異なります。順位だけで収益力や投資適格性を判断せず、同業他社との比較に使う必要があります。
成長率と利益率の関係をどう読むか
Pearson相関は-0.071、Spearman順位相関は0.227でした。直線的な関係はほぼ見られない一方、順位には弱い正の関係があります。除外条件を外した感度分析でも、両立割合は12.63%、Pearsonは-0.069、Spearmanは0.230で、主分析の方向性は大きく変わりませんでした。
相関係数は因果関係を示しません。高成長が高収益を引き起こすとも、高成長・高収益企業が割安または投資に適しているとも結論づけられません。
個別企業を見る際の確認事項
- M&Aや会計方針・連結範囲の変更による売上増加ではないか
- 起点の売上高が小さいためCAGRが大きく見えていないか
- 5期平均が直近の利益率低下を隠していないか
- 成長投資による一時的な利益率低下か、構造的な採算悪化か
- 利益の伸びに営業キャッシュフローが伴っているか
これらは確認の観点であり、集計対象の特定企業で実際に起きたと示すものではありません。スクリーナーは売上CAGRと最新FY営業利益率を使うため、この記事と同じ5期平均条件をそのまま再現するものではありません。最新の成長性・収益性を確認する入口として利用できます。
まとめ
高成長と高収益を両立した企業は378社、主分析3,086社の12.25%でした。高成長企業のうち高収益だった割合は33.13%であり、売上成長だけでは高い営業利益率を確保しているとは限りません。市場・業種・履歴の長さをそろえ、直近の業績とキャッシュフローまで確認することが重要です。
調査概要・限界
- 集計日時:2026年9月6日 9時16分(日本時間)。公開日とは別です
- 母集団:東証プライム・スタンダード・グロース3,718社
- 主分析:金融4業種、不規則FY、両指標を算出できない企業を順に除外した3,086社
- 実績FYのみを使用し、各社で対象FYの期末日は異なります
- 5期不足や売上・営業利益の欠損がある企業は、該当指標を算出不能として除外しました
- 不規則FYは直近5期の隣接期末日間隔が300日未満または430日超の場合と定義しました。日数だけの簡易判定で、すべての会計期間変更を完全に捉えるものではありません
- 5FYがそろう企業に分析対象が偏るため、特に履歴の短い上場企業を過小代表します
- 相関は因果関係を示さず、本記事は特定銘柄の推奨ではありません