独自調査
営業利益は黒字でも営業CFはマイナス? 東証上場企業を独自集計
両指標を同じ直近実績FYで確認できた3,577社のうち、営業利益が黒字で営業CFがマイナスだった企業は312社、8.72%でした。
利益が出ていても、その年度の営業活動による現金収支が必ずプラスになるとは限りません。J-Stock Dataでは、東証プライム・スタンダード・グロースの上場企業について、同じ直近実績FYの営業利益と営業キャッシュフロー(営業CF)の符号を集計しました。
両方を確認できた3,577社のうち、営業利益が黒字で営業CFがマイナスだった企業は312社、8.72%でした。営業利益が黒字で、営業CFが取得可能かつゼロではない3,224社を分母にすると9.68%です。
主な結果
- 調査対象3,718社のうち、両指標を同じ直近実績FYで取得できたのは3,577社(96.21%)
- 営業利益黒字・営業CFマイナスは312社、両指標取得企業の8.72%
- 金融4業種を除くと274社、3,479社中7.88%
- 該当312社のうち202社は、確認可能な最大5FYの中で複数FYに不一致があった
母数と欠損
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| 区分 | 企業数 | 対象3,718社に占める割合 |
|---|---|---|
| 営業利益を取得 | 3,612社 | 97.15% |
| 営業CFを取得 | 3,652社 | 98.22% |
| 両方を取得 | 3,577社 | 96.21% |
| 少なくとも一方が欠損 | 141社 | 3.79% |
一方の指標が欠ける企業について、古いFYの値で補完していません。市場別の両指標取得率は、プライム94.42%、スタンダード98.78%、グロース94.15%でした。プライムとグロースはスタンダードより欠損率が高いため、市場間の割合は取得範囲の違いも含む記述統計として読む必要があります。
業種別では銀行業79社のうち両指標が揃うのは18社で、欠損率は77.22%でした。両指標取得30社以上の他業種で最も高い精密機器は9.62%であり、銀行業の欠損は突出しています。このため、金融業を含む全体値だけでなく、金融4業種を除いた結果も併記します。
4群とゼロ値
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| 分類 | 企業数 | 両指標取得3,577社に占める割合 |
|---|---|---|
| 営業利益黒字・営業CFプラス | 2,912社 | 81.41% |
| 営業利益黒字・営業CFマイナス | 312社 | 8.72% |
| 営業利益赤字・営業CFプラス | 122社 | 3.41% |
| 営業利益赤字・営業CFマイナス | 230社 | 6.43% |
| 営業利益または営業CFがちょうど0 | 1社 | 0.03% |
4群の合計3,576社にゼロ値1社を足すと、両指標取得可能数3,577社と一致します。ゼロ値は黒字・赤字、プラス・マイナスのいずれにも無理に分類していません。
市場別ではグロースとスタンダードが高め
以下の「92社/1,472社」などの分母は、各市場で営業利益と営業CFの両方を取得できた企業数です。
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| 市場 | 両指標取得 | 該当企業 | 両指標取得企業に占める割合 | 黒字企業内の割合 |
|---|---|---|---|---|
| プライム | 1,472社 | 92社 | 6.25% | 6.45% |
| スタンダード | 1,542社 | 154社 | 9.99% | 11.26% |
| グロース | 563社 | 66社 | 11.72% | 15.38% |
グロースは両指標取得企業に占める割合、黒字企業内の割合とも最も高い結果でした。ただし、この集計だけで企業規模、成長段階、運転資本負担などの原因を切り分けることはできません。
業種差と金融業種の扱い
営業CFの性質は業種により異なります。特に金融業は資金の流れと貸借対照表の構造が一般事業会社と異なるため、主集計には含めつつ、金融4業種を除く感応度も確認しました。
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| 業種 | 両指標取得 | 該当企業 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 不動産業 | 130社 | 55社 | 42.31% |
| その他金融業 | 38社 | 15社 | 39.47% |
| 証券、商品先物取引業 | 35社 | 8社 | 22.86% |
| 建設業 | 139社 | 27社 | 19.42% |
| 卸売業 | 279社 | 36社 | 12.90% |
金融4業種を含む主集計は312社/3,577社(8.72%)、除外すると274社/3,479社(7.88%)でした。結論の方向は変わりませんが、金融業を含めると全体割合は0.84ポイント上がります。少数業種の高率を強調しないよう、順位表は両指標取得30社以上に限定しました。
単年度だけか、複数年度か
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| 履歴区分 | 企業数 | 312社に占める割合 |
|---|---|---|
| 複数FYで不一致 | 202社 | 64.74% |
| 単年度のみ(2FY以上を確認) | 99社 | 31.73% |
| 履歴不足(1FYのみ) | 11社 | 3.53% |
最大5FYについて、営業利益と営業CFが同じFYで両方揃う年度だけを比較しました。202社では複数FYに不一致が見られましたが、保存年数や取得率が企業ごとに異なるため、継続性の集計は補助情報です。古いFYを現在の直近FYへ補完していません。
「営業CFがマイナス」の読み方
営業CFは営業活動による現金の流入・流出を示しますが、現金及び現金同等物の残高変化そのものではありません。投資CF、財務CF、為替換算なども現金残高を動かすため、「営業CFがマイナス=会社の現金が減った」とは限りません。
黒字でも営業CFがマイナスになる背景として、売掛金や棚卸資産の増加、仕入債務の減少、税金支払い、成長に伴う運転資本負担などが考えられます。これらは一般的な仮説であり、今回の2指標だけから個社の原因、粉飾、資金繰り悪化、利益の質を断定することはできません。個別判断にはキャッシュフロー計算書の内訳と注記の確認が必要です。
まとめ
直近実績FYで営業利益と営業CFを確認できた3,577社のうち、黒字でも営業CFがマイナスだった企業は312社、8.72%でした。珍しくない一方、それだけで問題企業とは判断できません。市場・業種差、複数年度の推移、営業CFの内訳を合わせて読むための入口となる集計です。
調査概要・限界
- 基準日時:2026年9月13日17時17分(日本時間)。公開日とは別です
- 対象:東証プライム、スタンダード、グロースの上場中かつ業種情報がある3,718社
- 各社のDB基準日以前に期末を迎えた直近の実績FYのみ。四半期、会社予想、未来FYは不使用
- 営業利益と営業CFは同一企業・同一FYの1行から取得。欠損時の過年度補完なし
- 金額の大小や企業規模は調整せず、符号だけを比較
- 本調査は特定銘柄の推奨や個社の会計判断を目的としません