独自調査
EPSが成長している企業ほどPERは高い?東証上場企業を独自分析
両指標を算出できた2,612社ではSpearman順位相関は-0.260、Pearson相関は-0.171。EPS CAGR 10%以上・PER 15倍以下は656社、25.11%でした。
訂正(2026年9月26日)
上場廃止銘柄の株式併合が株価取得元の過去価格へ遡及反映されたことを確認したため、日本ドライケミカル(1909)とサニーサイドアップグループ(2180)を記事基準日時点の上場対象から除外し、PER集計対象から1909を除外して再集計しました。対象3市場は3,718社から3,716社、両指標算出可は2,613社から2,612社、Pearson相関は-0.010877から-0.171356、Spearman順位相関は-0.259947から-0.259565へ訂正しました。高成長企業989社、高成長・低PER企業656社は変わらず、「EPS成長率が高いほどPERも高いとは確認できない」という主要な結論も変わりません。
利益成長への期待が株価に織り込まれるなら、EPSが伸びた企業ほどPERも高くなるのでしょうか。東証プライム・スタンダード・グロースの上場企業について、直近5期のFY実績からEPS CAGRを計算し、最新PERとの関係を調べました。
両方を算出できた2,612社では、Spearman順位相関は-0.260でした。少なくとも今回の横断集計では「EPS成長率が高いほどPERも高い」という単調な関係は確認できず、むしろ弱い負の関係でした。
今回の結果
- EPS CAGRとPERを両方算出できた企業は2,612社
- Spearman順位相関は-0.260、Pearson相関は-0.171
- EPS CAGR 10%以上・PER 15倍以下は656社、全対象の25.11%
- 成長率10%以上の989社のうち、PER 15倍以下は656社、66.33%
EPS CAGRの定義と対象
EPS CAGR(直近5期)=(最新FY EPS ÷ 最古FY EPS)^(1 ÷ 4期間) − 1
本記事のEPS CAGRは、直近5期のFY実績を使い、その間の4年間の年平均変化率として算出しています。「5年間のEPS成長率」ではありません。5期すべてのEPSが取得でき、最古・最新EPSが正の場合だけ計算しました。途中3期に赤字またはEPSゼロを含む337社は、売上CAGRと同じ両端値の規則に従って残しています。このため、算出対象は「継続的に毎年成長した企業」を意味しません。
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| 段階 | 企業数 |
|---|---|
| 対象3市場 | 3,716社 |
| FY EPSを1期以上取得 | 3,684社 |
| 直近5期FYあり | 3,250社 |
| 5期EPS完備 | 3,239社 |
| 最古・最新EPSが正 | 2,650社 |
| EPS CAGR・PERとも算出可 | 2,612社 |
EPS CAGRは過去のFY実績5期による中期的な変化、PERは最新株価を株価基準日以前の直近12か月利益(TTM EPS)で割った現在の株価評価です。PERは2026年9月16日を基準日とする企業が2,602社で最多でした。両者は同じ期間のEPSを使う指標ではありません。
成長率が高い階級ほどPER中央値は低かった
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| EPS CAGR | 企業数 | 構成比 | PER第1四分位 | 中央値 | 第3四分位 |
|---|---|---|---|---|---|
| 0%未満 | 1,057社 | 40.47% | 11.40倍 | 16.74倍 | 24.49倍 |
| 0%以上5%未満 | 273社 | 10.45% | 10.31倍 | 14.21倍 | 18.74倍 |
| 5%以上10%未満 | 293社 | 11.22% | 9.73倍 | 13.57倍 | 17.26倍 |
| 10%以上20%未満 | 427社 | 16.35% | 9.82倍 | 12.75倍 | 17.20倍 |
| 20%以上 | 562社 | 21.52% | 8.88倍 | 12.21倍 | 16.20倍 |
高成長・低PERは656社
高成長をEPS CAGR 10%以上、低PERを15倍以下とする便宜的な区分です。10%は二桁成長、15倍は比較に使いやすいPER水準ですが、該当するだけで割安とは判断できません。
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| 区分 | 企業数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 高成長・低PER | 656社 | 25.11% |
| 高成長・非低PER | 333社 | 12.75% |
| 非高成長・低PER | 783社 | 29.98% |
| 非高成長・非低PER | 840社 | 32.16% |
市場別ではスタンダードの該当割合が高い
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| 市場 | 対象 | EPS CAGR中央値 | PER中央値 | 高成長・低PER | 市場内割合 | 高成長内の低PER割合 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| プライム | 1,342社 | 4.62% | 15.20倍 | 300社 | 22.35% | 59.64% |
| スタンダード | 1,095社 | 4.89% | 12.02倍 | 327社 | 29.86% | 76.58% |
| グロース | 175社 | 2.26% | 16.23倍 | 29社 | 16.57% | 49.15% |
グロースは対象175社と少なく、上場後のFY履歴が5期に満たない企業が多い影響を受けます。市場区分が結果の原因だとは断定できません。
業種構成によって分布は異なる
対象20社以上の業種では、高成長・低PER割合が高かったのは証券・商品先物取引業60.71%、電気・ガス業47.62%、建設業42.15%、陸運業41.30%、不動産業37.11%でした。
相関が負になった理由を断定しない
全2,612社のSpearman順位相関は-0.260、Pearson相関は-0.171でした。順位相関は訂正前とほぼ同じ一方、記事基準日時点の対象外銘柄を除いたPearson相関は、ほぼ無相関ではなく弱い負の線形関係を示します。両指標を1~99パーセンタイルに絞った参考集計は2,510社、PER上限は115.2412倍で、Spearmanは-0.235、Pearsonは-0.227です。過去のEPS成長率と現在のPERには、成長の持続期待、景気循環、利益ピーク、事業リスク、金利、市場区分や業種構成などが同時に影響します。
閾値を変えても該当企業は存在する
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| EPS CAGR条件 | PER 10倍以下 | PER 15倍以下 | PER 20倍以下 |
|---|---|---|---|
| 5%以上 | 376社 | 835社 | 1,082社 |
| 10%以上 | 298社 | 656社 | 840社 |
| 20%以上 | 183社 | 387社 | 476社 |
中心結果は10%・15倍だけで突然生じるものではありません。ただし、閾値は企業価値を決める基準ではなく、比較の入口です。
利用時の注意点
- 過去5期のEPS成長が将来も続くとは限らない
- 始点と終点を比較するため、途中経過の安定性や毎年の成長を保証しない
- 途中赤字、一時利益、税効果、景気循環、株式数変動で両端値が強く動く
- 株式分割・併合、基本EPS・希薄化後EPS、会計基準変更をデータだけで完全には識別できない
- PERが低い理由として将来減益や事業リスクが織り込まれている場合がある
- 11社には通常年次から外れるFY期末間隔があり、決算期変更などを個別確認する必要がある
まとめ
今回のデータでは、EPS CAGRが高い企業ほどPERも高いとはいえませんでした。階級別PER中央値は成長率が高いほど低く、順位相関も-0.260でした。一方、高成長・低PERの656社を機械的に割安と判断することもできません。EPSの推移、利益の質、キャッシュフロー、将来見通しを個別に確認するための入口として利用してください。